
DAISY LIN MAGAZINEで2025年3月からスタートした、連載「ミスリンのお遣いもの」。
ミスリンがお遣いものを通して感じた幸せ、喜び、感動などを、月に一度、自身のエピソードを交えて紹介する本連載。お遣いものにも宿るミスリンの"生きる哲学"をお伝えします。
【第2回】 「タケノとおはぎ」の眉目秀麗なおはぎ
by Noriko "DAISY LIN " Maeda (ミスリン)
以前、ある編集者の方から打合せの時に頂いた和菓子に驚かされたことがあります。それは、丸い経木わっぱの中で花が咲いたような見目麗しいおはぎ。
おはぎといえば、それまでは素朴な風情をまとうシンプルな和菓子だと認識していました。でも、この「タケノとおはぎ」のおはぎはまるでアート作品のようで、まったくの別物でした。
わっぱに納められたおはぎは7種類。ひとつひとつ小じんまりとした大きさで、味も色も異なります。黄色の花びらとココア色、向日葵のような形のものもあり、それはそれはチャーミングで、わっぱの蓋をとった瞬間、しばらく見惚れてしまいました。
オフィスのスタッフたちとどれにしましょうかと、皆ではしゃぎながら選ぶひと時。
美味しい日本茶を煎れて、ひと口、またひと口と口に運ぶたびに感動したことを覚えています。
調べてみると、店主はスペインバルなどの料理人を経て、おはぎ専門の道を選んだといいます。定番は、子どもの頃、祖母タケノさんが作ってくれた昔ながらのこし餡とつぶ餡の味を受け継いだおはぎ。
そして、え? これがおはぎなの? と意表をつく季節限定の創作おはぎを合わせ、毎朝6時から9種類を手作りして店頭に並べているのだとか。だから販売は店頭のみ、開店は正午から、賞味期限は当日というのも納得です。

おはぎというジャンルを超え、和菓子の可能性を広げる「タケノとおはぎ」のものづくりに対する真摯な思いにはおおいに共感します。
しかも定番の味をぶれずに守る姿勢を意気に感じるのです。
私が気に入ったのは見た目だけではありません。ナチュラルな甘さとコク、芳醇な香りがありのままに感じられたことにも心が動かされました。
保存料や人工甘味料は不使用、無添加ならではの上品で雑味の無さが本当に美味しく、色の美しさも天然の色みそのものでした。
添加物を使用しないということは、日持ちがしないということ。こちらのおはぎは賞味期限が当日なので、お遣いものとしてはなかなかハードルが高い品ではあります。
相手の方の都合や渡す条件などを考えたら、お遣いものにしやすい品ではないかもしれません。
でも、身体は口にするもので作られると私は考えています。毎日を健康で過ごすためには、栄養価の高い季節のものを中心に、可能な限り添加物の少ない食品を選びたい。
世の中にグルメな商品は数多ありますが、お遣いものであっても、私はやはり体にいいものをお渡ししたいと思っているのです。
ですから、そうした私の志向をくみとり、無添加で美味しいものを選んでくださった、その気持ちが何よりうれしかったのです。
しかも、パッケージ好きな私に響く、経木わっぱというプレゼンテーション付き。
当時はまだ知る人ぞ知る存在だったこの店に並んで手に入れたおはぎと聞き、情報の早さと私のために時間を費やしてくださったことにも嬉しさが増しました。

相手の気持ちを動かすものは、感謝の気持ちが込められているかどうか。
私のお遣いものも感謝の気持ち、「ありがとう!」を載せて「心ばかりですが」とお渡ししたいと思っています。
【今回のお遣いもの】
「タケノとおはぎ」世田谷本店の日替わり7種おはぎセット
季節に合った素材とクリエイティブな発想で作る日替わりおはぎと、定番のこし餡とつぶ餡、白こし餡2種のおはぎを販売するテイクアウト専門店。1個(税込210円~)から販売。
賞味期限は当日中。配送不可。
1日限定数の日替わり7種おはぎセット(税込2,150円前後)とオーダーメイドおはぎ「春まど」のみ予約可。店舗受け取り必須。東京都世田谷区のふるさと納税品にも参加。
東京都世田谷区用賀3丁目5-6 アーニ出版ビル1階
☎03-6805-6075
営業時間12時~18時(売切終了)
月火曜定休(不定休はSNSで確認)
学芸大学店(臨時休業中)と表参道店もあり。
各地での催事イベントに出店も。
写真/「タケノのおはぎ」日替わり7種おはぎセットとお好み5種詰め
経木わっぱは7と5の奇数個に対応し、好みのマスキングテープを7種類から選ぶことができる。
この日の日替わり5種は【かぼちゃと紫芋】【春告鳥(紫蘇の実とよもぎ)】【苺と甘酒】【胡桃味噌のオーブン焼き】【ココナッツとレモンピール】。定番は、小豆餡、白こし餡、【ナッツ】と【麻の実ときな粉】の2種。
取材・文/武田麻衣子
撮影/Kevin Chan
構成/恩田裕子
【次回】4月下旬配信予定