
DAISY LIN MAGAZINEで2025年3月からスタートした、連載「ミスリンのお遣いもの」。
ミスリンがお遣いものを通して感じた幸せ、喜び、感動などを、月に一度、自身のエピソードを交えて紹介する本連載。お遣いものにも宿るミスリンの"生きる哲学"をお伝えします。
【第3回】京都の志が宿る「シェリーメゾンドビスキュイ」のビスキュイサンド
by Noriko "DAISY LIN " Maeda (ミスリン)
このところ、巷ではクッキー缶が大流行り。目を惹く美しい缶や、その缶にクッキーがきっちりと整列している様子、クッキー自体の愛らしいフォルムなどが魅力で、またバタークリームをたっぷりはさんだサンドクッキーも席巻中です。
各地の人気店やブランド、ホテル、レストランまでもが趣向を凝らしたオリジナルのクッキー缶を発売し、ネットニュースなどでも新商品の話題をよく目にします。
ですが、私はそういったブームをよそに、なぜだかクッキーに興味がもてず、あまり口にはしませんでした。
可愛い箱好きとしてはおしゃれなアルミ缶には興味があるものの、クッキーはいわば粉もの。おやつやデザートとして頂くには私にはやや重たく感じるのです。とくに人気が高いバタークリームのサンドクッキーは、一食分のカロリーに近いかもしれない、とその重厚さに抵抗感がありました。
ところが、5〜6年前でしょうか。その印象をすっかり覆す逸品に出合いました。
それが京都発「シェリーメゾンドビスキュイ」のビスキュイサンド。京都にお住いの方から、「いまとても評判のクッキーが京都にあるんですよ」と頂いたのが最初でした。

でもお味は? 重たいタイプでなければいいけれど、と思いながらひとつ頂いてみました。
クッキーは薄くてサクッと香ばしい食感。バタークリームはフレッシュで甘さ控えめ。豊かな風味が口から鼻腔に抜け、見た目の愛らしさとは裏腹に、とても大人の味わいです。
食べ終えて真っ先に感じたのは、清潔感。そして、作り手のクッキー愛がひしひしと伝わってきたのです。クッキーに感激したのは初めてのことでした。
この軽やかな美味しさの秘密は、こだわり抜かれた素材の良さと甘さに頼らない本物の味わいに尽きると思います。
ビスキュイサンドの賞味期限は冷蔵で1週間です。クッキーやクリームに使用されるのは、コクのある国産発酵無塩バター。クッキーは製菓用の微粒子グラニュー糖であるカソナードでカリカリとした食感に。またバタークリームには天然カカオのチョコレートや練乳で甘さを。通年商品のいちごやフランボワーズはフリーズドライで自然な酸味があり、軽やかな味わいを加えています。
たったひとつでも、生ケーキを頂いているような満足感。無添加ならではのすっきりとした後味も印象的です。
1缶9個入りのため、私は食べきれなかった分は冷凍庫で保存し、前日に冷蔵庫に移して頂いています。でも、冷凍のままでもサンドアイスクリームのようで、また違う味わいが楽しめます。

オリジナルレシピのビスキュイは、厳選素材の生地をひとつひとつ丁寧に手で型抜きし、オーブンで焼き上げるという手作り。当然ながら1日に作られる数に限りがありますが、材料と手作りへのこだわりはぶれません。
私がビスキュイサンドに感じた"清潔感"は、大量生産では成し得ない、無添加の手作りというものづくりの本質に対してでした。自ずと数量限定となり日持ちもしませんが、多めの砂糖や添加物で賞味期限を延ばすことはせず、ひたむきに取り組むかなえさんの潔さも味わいに反映しているのだと思います。
それこそが長く愛される美味しさの所以。洋菓子屋さんですが、京都らしいものづくりの原点を感じるのです。
300年続かないと老舗とはいえないとされる職人の街、京都。ここで店舗を構えるには、目が行き届く範囲の規模で、真摯なものづくりを続ける姿勢が必要だと思います。
規模を広げすぎず、人気が出てもぶれることなく謙虚さを忘れず、ものづくりに信念を持ち続ける。そうでなければ、長く愛されるお店にはなりえないのです。

また、ビスキュイ自体には卵、アーモンドを使用していないので、アレルギーを心配される方へひとこと添えてお渡しすることから会話が弾むのではないでしょうか。
生み出されるものには、作り手の志が宿るもの。このクッキー缶にも、優しい人柄と愛情、そして強くて深い信念がたっぷり詰められています。大切な方に安心して差し上げられる新しい名品です。
【今回のお遣いもの】
シェリーメゾンドビスキュイのビスキュイサンド
いちご&フランボワーズサンドやラムレーズン&マロングラッセサンドなどの通年商品と季節限定サンドがある。オリジナル缶9個入り(税込3,350円~)。
賞味期限は冷蔵保存で1週間。お持ち歩き2時間以内。
発酵バター、国内小麦、グラニュー糖の上質な材料だけでシンプルに焼き上げた風味豊かなサクサク食感のビスキュイナチュール(約40枚入り、税込2,850円、賞味期限/常温保存1か月)や3種のビスキュイ詰め合わせ(税込3,550円)のファンも多い。
CHÉRIE MAISON DU BISCUIT
京都市中京区福屋町733-2(テイクアウトSHOP)
木・金・土曜営業 営業時間12時30分~16時/土曜16時30分(不定休あり)
オンラインショップでは、商品の準備が整いしだい販売商品の組み合わせセットのみ毎週不定期販売している(最新情報は公式Instagramで確認可)。予約受付は1週間前まで。
公式サイト >>kanaekobayashi.com

取材・文/武田麻衣子
撮影/Kevin Chan
構成/恩田裕子
【次回】5月下旬配信予定