
ミスリンがお遣いものを通して感じた幸せ、喜び、感動などを、月に一度、自身のエピソードを交えて紹介する連載「ミスリンのお遣いもの」。お遣いものにも宿るミスリンの"生きる哲学"をお伝えします。
【第7回】氷出しで旨みを味わう「木屋芳友園」の玉露 星野しずく
by Noriko "DAISY LIN" Maeda (ミスリン)
暑さ厳しい折、私が毎朝欠かさず頂いているものがあります。それは氷で淹れる冷たい玉露。他の季節には温かい玉露を頂きますが、夏場の冷たい玉露はまた格別です。
玉露のまろやかなエキスを少しずつ口に含んで頂くと、まるで出汁のような美味しさで、旨みや甘みが際立ちます。それでいて、後味はすっきり。玉露の深い味わいに、背筋がシャンと伸び、頭も冴えるのは、お茶特有のアミノ酸、テアニンなど旨み成分の効果もあるようです。
私がいつも取り寄せているのは、八女茶の「木屋芳友園」玉露 星野しずく。最高峰の茶葉の力が心身を整え、一日の始まりにぴったりです。その上、ガラスの茶器に入れた氷出しの玉露は、清涼感たっぷりの若葉色が美しく、爽やかな気分にしてくれます。至福のひとときをお福分けしたいという気持ちから、この時期のお遣いものとしても重宝しています。
母が福岡県出身なので、私が生まれる前から、実家には常に「木屋芳友園」の八女茶が常備してありました。小さな頃から慣れ親しんだ玉露や煎茶、白折…。いずれも、私にとってスタンダードな愛好品といえます。

日光をたっぷり浴びて育てられる煎茶と違い、玉露は摘み取る約3週間前から日光を遮る栽培法によりテアニンの含有量が増え、苦みや渋みが抑えられてまろやかになるといいます。
玉露の旨み成分、そしてビタミンCやカテキンなどの健康的な成分を最大限に引き出すため、できるだけゆっくり茶葉を開かせる氷出しで頂くのが夏場の最善の方法と実践しています。


私の作り方は、まずガラスの急須に、ミネラルウォーターで作った大きめの氷を8個ほど入れます。もし氷に霜が付いていたらさっと洗い流して急須へ。その氷の上に、大さじ一杯(約15グラム)の玉露の茶葉を直接振りかけます。そして、夏なら冷蔵庫でゆっくりと6時間ほどかけて氷を溶かしながら茶葉を開かせます。ちょうどいい頃合いになったら、茶葉を漉してガラス瓶へ。いちばん美味しい成分を含んでいる最後の一滴までしっかり移し切ることが大切です。そしてお気に入りの茶器に注ぎ、少しずつ大切に旨みを味わいます。えぐみと渋みが出ないよう、ベストなバランスを守ることも必要だと思います。
玉露は古来より愛される、不老長寿の縁起物でもあります。どなたにも好まれるお遣いものですが、外国の方に差し上げるときは、この時期ならではの氷出しの淹れ方について手紙にしたためて贈るようにしています。
【今回のお遣いもの】
「木屋芳友園」の玉露 星野しずく
1930年に八女市星野村で生まれた初代が茶商として創業して以来、90年以上、美味しく健康に効く〝まろやかなお茶〟をテーマに掲げ、第一人者として地元を牽引。現在は日本茶鑑定士の資格を持つ3代目が情熱を傾ける。玉露 星野しずくは、茶葉から落とすひとしずくに星野の里のテロワールを込め五感をふるわせるにふさわしい玉露ということから名付けられた。厳選栽培により生産量が限られている逸品。
木屋芳友園/茶房 星水庵
福岡県八女市星野村4529-1
フリーダイヤル 0120-44-1563
営業時間 販売/9時〜17時
不定休
オンラインショップ
https://horyouen-online.com/
写真/玉露 星野しずく 伝統本玉露(1缶・100g)税込6,566円
取材・文/武田麻衣子
撮影/Kevin Chan
構成/恩田裕子
【次回】9月下旬配信予定